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意匠法の改正に向けて

前々回に紹介した「ビジネスモデルのデザイン」と、前回に紹介した「報告書」での提言は、デザインのとらえ方を広げなければいけない、どこまで「意匠制度」で保護できるのかを考えよ、という基本線で一致していると思います。

しかし、これを受けた別紙「産業競争力に資する今後の意匠制度のあり方」で提示されているのは、「画像意匠の保護拡大」と「店舗デザイン」です。

「産業競争力に資する今後の意匠制度のあり方」では、報告書を受けて「課題」を適切に記しています。

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1. 我が国の意匠制度の現状と課題
意匠制度は、新規に創作された独創的な意匠を保護するものであり、デザインの創作・保護・活用サイクルの基軸となるものである。この意匠制度が潤滑に機能することにより、イノベーションの創出における重要なツールであるデザインを、我が国企業の産業競争力の資とすることができる。
近年、IoT、AI及びビッグデータ等の新技術による社会変革が勃興し、産業界を取り巻く状況は劇的に変化している。産業財産権制度の一翼を担う意匠制度には、かかる変化に機敏に対応し、当該変革を牽引する役割を果たすことが期待されている。
しかしながら、デザインの在り方が多様化する一方、我が国意匠制度の保護対象は、制限的ではないかとの意見が出ている。第4次産業革命が進む中で、顧客とのインターフェースとして重要な役割を担う画像デザインについてみても、我が国においては、その保護が十分でないために、新たにデザインを創作しても模倣のリスクにさらされている可能性がある。結果、投資に十分なインセンティブを与えられず、投資が無いからより良いデザインが生まれない、良いデザインが無いから勝てない、といった負のスパイラルに陥ってしまうのではないか、との指摘もある。
また、ブランド形成に資する意匠権の広がりやつながりも十分ではないとの意見もある。現行の意匠制度では、一貫したコンセプトに基づいた製品群のデザインについて、意匠権を取得しようとしても、最初に出願されたデザインが公開されると、後発のデザインは、原則意匠登録を受けることができない。また、意匠権の存続期間の延長を求める声もある。
デザインが重視される中、日々新たな創り手による創作が芽生えており、この制度を活用する者の手続上の障壁を可能な限り撤廃し、より簡便で実効力の高い意匠制度を実現する必要性が生じている。

2.1.1 画像デザインの保護
① 問題の所在
情報通信技術の急速な進展に伴い、新技術に基づく製品やサービスが近時の新たな産業競争力の源泉となってきている。かかる分野においては、技術の向上に比例して製品やサービスが複雑化するというジレンマを抱えており、その救い手として、UI(ユーザーインターフェース)、及びUX(ユーザーエクスペリエンス)の果たす役割が急速に増大している。また、顧客の体験価値が重視されてきており、顧客との接点となるUIやUXのデザインの重要性が高まっている1。加えて、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)技術や、多様な投影技術を活用した製品やサービスを通じて、顧客に新たな体験を提供し、他社との差別化を図る企業も出現してきている。
しかし、現行意匠制度においては、必ずしもこれらの新技術を活かした意匠を十分に保護することはできていない。

2.1.2 空間デザインの保護
① 問題の所在
建築物の内外装のデザインをはじめとする空間デザインは、近年、顧客との直接的な接点として重視されてきており、心地良い空間を提供し、企業のアイデンティティーを空間に表現することが、UX、ひいてはブランドの形成の糧となってきている。
しかし、現行意匠制度においては、これらの意匠を十分に保護することができていないとの声もある。
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しかし、「検討の方向性」では、
例えば画像デザイン等、新技術の特性を活かした新たな製品やサービスのために創作されたデザインを適切に保護できるよう、意匠法における意匠の定義を見直すなど、意匠法の保護対象について検討を進めるべきではないか。
と記しながらも、そこで示されている「保護されていない画像デザイン」の例が「壁に投影される画像デザイン」であり、「空間デザイン」についても「建物の内外装」というものの、どこまで保護しようとしているのかは見えてこない。

対応策があまりにも限定的ではないでしょうか。

一部の報道には、来年の国会で法改正、とも伝えられていますが、せっかくすばらしい報告書が出ている時に、ラジカルな検討をしないことはとてももったいないことだと思います。
「デザイン経営」を本気で支えるのであれば、急がずに、「意匠法で保護すべきものはどこまでなのか」「何を意匠法で保護する必要があるのか」ということをしっかりと検討してもらいたいものです。
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legatoip

Author:legatoip
弁理士 峯唯夫です。
特許や、意匠・商標・著作権などの「知的財産」を扱う仕事をして35年以上になります。
このブログは、峯の日常活動の備忘録として、思いつくことを記述します。

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