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音楽教室と著作権

音楽教室から著作権料を徴収

JASRACが音楽教室から著作権料を徴収する方針であり、ヤマハ、河合などの企業・団体が「音楽教育を守る会」を結成した、ということを受けて、先日、峯が主催する著作権の勉強会で取り上げました。

根拠は著作権法22条です。
(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的と して(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

[JASRACの発言]
徴収については、2003年から楽器メーカーなどと協議してきたという。既に、カラオケ教室や、カルチャーセンターで行われる楽器教室などからは使用料の徴収を始めており、「(カルチャーセンターではない)楽器教室のみが支払いをいただけていない状況」と説明。「使用料を支払っている事業者との公平性を確保する観点からも、これ以上、楽器教室の使用料徴収の開始を遅らせることはできない」と考えているという。

 「楽器教室からの使用料徴収は音楽文化の衰退につながるのでは」との意見には、「著作権を保護し、使用料をいただいて著作者に分配することが、次の創作を支えていく『創造のサイクル』維持につながる」とし、「楽器教室にこの創造のサイクルに加わっていただくことこそが、新たな作品の創造につながり、音楽文化の発展に寄与する」と理解を求めている。
(出典:http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1702/28/news106.html#l_yx_jasrac.jpg)

このテーマについて、玉井東大教授と福井弁護士がサンケイ新聞で見解を披露している。概略は以下の通り。

[JASRAC外部理事の玉井克哉東京大教授]
法廷闘争になったら、論点は著作権法が規定する「演奏権」だ
「著作権法22条は、公衆に直接聞かせたり見せたりする目的で楽曲を演奏する演奏権は作曲家や作詞家が専有すると規定している。公衆とは不特定の人または多数の人。」

音楽教室での指導は「聞かせるための演奏」に該当するのか、という問いに対し、
「先生が弾くのを生徒が聞かずに、どうやって勉強するのか。先生が生徒の鑑賞に耐え得るレベルで演奏できなければ、教室で指導なんてできない。先生は受講料をもらって教えているのに、聞かせるために演奏していないということにはならないだろう」
(出典:http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1703/13/news057_2.html)

[著作権の公益性問われる 福井健策弁護士]
著作権法が定められたのは昭和45年だ
「その当時も音楽教室はあったはずだ。この法律を定めるときに、教室での生徒への指導も含めて著作権の対象にしようと思ったのなら、それが分かるように著作権法に明記したのではないか。そういうことも議論されるべきだろう」

JASRACはこれまで、ダンス教室やカラオケ教室、カルチャーセンターなどに徴収対象を広げてきたという問いに対し、
 「ここで問われているのは法的に払う義務があるかどうかだ。JASRACは各種教室から著作権料を徴収しているが、これまでは音楽を享受する側からの徴収ともいえた。」
 「しかし、音楽教室は練習する場であり、CDなどを流す場と同じではない。カルチャーセンターにはカラオケ教室のような講座もあり、そちらはまだしも公衆に聞かせるための演奏に近いのでは」
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1703/13/news057_3.html
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1703/13/news057_4.html

音楽教室の実態
 峯は小学生の頃「ピアノ」を習い、今「ヤマハの大人のピアノ」に通っています。その中で、先生が楽曲をフルに弾いてくれた記憶はありません。基本的には「直さなければいけないところ」を数小節、見本を聞かせてくれる、という程度です。勉強会のメンバーでピアノを習った経験者、ドラムを習っている人も、同じことを言っていました。
 確かに、「数小節」であっても「演奏権」は及ぶことにはなるのでしょう。しかし、玉井教授の「先生が弾くのを生徒が聞かずに、どうやって勉強するのか」という発言は、「音楽教室」の実態を理解した上のものなのか。確かに「聞かせるため」に演奏しているのですが、腑に落ちません。

「公衆」とは
 JASRACが後ろ盾にしているのは「ダンス教室事件」だと思います。この判決では、誰でも入会できること等を挙げて、教室の参加者を「公衆」と認定しています。
 峯はこの認定自体がすごく乱暴だと思っていますが、この判示は「音楽教室」には妥当しないと思っています。その根拠は「先生と生徒の固定」です。
 ダンス教室事件の場合、あるレッスンの参加者は固定されていなかった。しかし、音楽教室の場合、通常は「一対一」のレッスンであり、先生と生徒は固定されています。先生は「固定された、特定人」のために演奏します。生徒は「公衆」ではないと思います。

「聞かせるため」とは
  著作権法22条を再度引用します。
(上演権及び演奏権)
第二十二条 著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的と して(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。

 なぜ「聞かせることを目的として」と書いたのでしょうか。単に、「 著作者は、その著作物を、上演し、又は演奏する権利を専有する。」でもよかったのに。「聞かせることを目的として」とはどういうことのなでしょう。
 峯は、「楽曲として感受する」程度の意味ではないか、と考えています。
 ダンス教室の場合、「楽曲として感受」しなければ踊れないのですが、音楽教室では「楽曲として感受」する場面はほとんどないでしょう。数小節の「見本」を聞いても「楽曲として感受」はしていません。

むすび
著作権法は「 文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。 」(第1条)と規定しています。「公正な利用」「文化の発展」と「権利の保護」は著作権法の車の両輪です。フェアユース規定がないとはいうものの、「権利」の及ぶ範囲については十分な配慮が必要だと思います。1条をしっかりと認識した上での「保護」を裁判所が呈示することを期待しています。
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プロフィール

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Author:legatoip
弁理士 峯唯夫です。
特許や、意匠・商標・著作権などの「知的財産」を扱う仕事をして35年以上になります。
このブログは、峯の日常活動の備忘録として、思いつくことを記述します。

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