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パロディー(フランク三浦)

「フランクミューラー」と「フランク三浦」
裁判所が両商標を非類似と判断したことが契機となって、「フランク三浦」のパロディー商品がマスコミでも話題になっています。
朝日新聞16日夕刊にも「パロディー これはOK?」という見出しで、「スイスの高級時計のパロディー商品「フランク三浦」。この商標を巡る裁判で、知財高裁が今月中旬に出した判決は「三浦OK」。記者にとっては朗報だった。・・・見回すとパロディー商品はさまざまだけれど、どこまで認められるのか?」と。

どうも、判決が誤解されているようです。
知財高裁の判決( 平成28年 4月12日判決 平27(行ケ)10219号)は、商標として、「フランクミューラー」と「フランク三浦」が類似しない、と判断しただけであって、パロディーがどこまで認められるか、については言っていません。「フランクミューラー」の特徴のある文字盤と「フランク三浦」の文字盤が似ているかどうか、だからどうなんだ、ということは一切無視しています。
この判決は、「パロディー」の許容とは全く関係がありません。淡々と、商標の類否を判断しただけです。
以下、判決が何を判断したのか、簡潔に記します。

[特許庁の判断]
 本件商標からは「フランクミウラ」の称呼が生じるとともに,(中略)本件商標からは,著名ブランドとしての「フランク ミュラー」を想起させる場合がある。
 引用商標(注:フランクミューラー社の登録商標)は「フランクミュラー」の称呼を生じ,著名であるから,著名ブランドとしての「フランク ミュラー」の観念を生じる。 本件商標)注:フランク三浦)は,片仮名と漢字を組み合わせた構成より成るのに対して,引用商標は,片仮名又は欧文字のみの構成より成るものであるから,本件商標と引用商標とを全体的に観察すれば,外観上,区別し得るものである。しかし,本件商標と引用商標の称呼は,それぞれ一連に称呼するときには,全体の語調,語感が近似し,相紛らわしい類似の商標である。さらに,本件商標は,著名ブランドとしての「フランク ミュラー」の観念を想起させる場合があることから,著名ブランドとしての「フランク ミュラー」の観念を生じる引用商標とは,観念上,類似する。

[裁判所の判断]
 (1) 本件商標について
 本件商標は,別紙本件商標目録記載のとおり,「フランク」の片仮名及び「三浦」(中略)の漢字を手書き風の同書,同大,等間隔に横書きして成るもので,外観視覚上,まとまりよく一体に表わされているものであって,その構成全体から「フランクミウラ」との称呼が自然に生じる。(中略)
 また,「三浦」は,日本人の一般的な姓であるほか,日本の地名を表す語である。「フランク」は,外国人の一般的な名であるが,「率直な」程度の意味を有する英語(frank)の片仮名表記でもあるから,同様の観念も生じ得る。(中略)本件商標からは,「フランク三浦」との名又は名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じる。

 (2) 引用商標について
 (略)
 (イ) 以上によれば,世界的に被告使用商標2を用いて時計が販売されるのみならず,日本国内においても,平成4年から被告使用商標を用いて時計の販売が開始され,その後も使用が継続された結果,被告使用商標は,本件商標の商標登録出願時及び登録査定時においては,外国の高級ブランドとしての被告商品を表示するものとして,我が国においても,需要者の間に広く認識され,周知となっていたものと認められる(原告も被告使用商標の周知性を争っていない。)。
 イ 引用商標1は,別紙引用商標目録記載1のとおり,「フランク ミュラー」の片仮名を標準文字で書して成るものであり,その構成全体から「フランクミュラー」との称呼が自然に生じる。そして,引用商標1は,周知の被告使用商標1と同一の構成の商標であるから,引用商標1からは,被告商品の観念が生じる。

  (3) 本件商標と引用商標の類否について
   ア 本件商標と引用商標1の類否について
 (ア) 本件商標と引用商標1を対比すると,本件商標より生じる「フランクミウラ」の称呼と引用商標1から生じる「フランクミュラー」の称呼は,第4音までの「フ」「ラ」「ン」「ク」においては共通するが,第5音目以降につき,本件商標が「ミウラ」であり,引用商標1が「ミュラー」であって,本件商標の称呼が第5音目と第6音目において「ミ」「ウ」であり,語尾の長音がないのに対して,引用商標1においては,第5音目において「ミュ」であり,語尾に長音がある点で異なっている。しかし,第5音目以降において,「ミ」及び「ラ」の音は共通すること,両者で異なる「ウ」の音と拗音「ュ」の音は母音を共通にする近似音である上に,いずれも構成全体の中間の位置にあるから,本件商標と引用商標1をそれぞれ一連に称呼する場合,聴者は差異音「ウ」,「ュ」からは特に強い印象を受けないままに聞き流してしまう可能性が高いこと,引用商標1の称呼中の語尾の長音は,語尾に位置するものである上に,その前音である「ラ」の音に吸収されやすいものであるから,長音を有するか否かの相違は,明瞭に聴取することが困難であることに照らすと,両商標を一連に称呼するときは,全体の語感,語調が近似した紛らわしいものというべきであり,本件商標と引用商標1は,称呼において類似する。
 他方,本件商標は手書き風の片仮名及び漢字を組み合わせた構成から成るのに対し,引用商標1は片仮名のみの構成から成るものであるから,本件商標と引用商標1は,その外観において明確に区別し得る。
 さらに,本件商標からは,「フランク三浦」との名ないしは名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し,引用商標1からは,外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから,両者は観念において大きく相違する。
 そして,本件商標及び引用商標1の指定商品において,専ら商標の称呼のみによって商標を識別し,商品の出所が判別される実情があることを認めるに足りる証拠はない。
 以上によれば,本件商標と引用商標1は,称呼においては類似するものの,外観において明確に区別し得るものであり,観念においても大きく異なるものである上に,本件商標及び引用商標1の指定商品において,商標の称呼のみで出所が識別されるような実情も認められず,称呼による識別性が,外観及び観念による識別性を上回るともいえないから,本件商標及び引用商標1が同一又は類似の商品に使用されたとしても,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるとはいえない。
 そうすると,本件商標は引用商標1に類似するものということはできない。

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 裁判所が判断したのは、単に、商標「フランクミューラー」と「フランク三浦」が類似しない、ということであって、パロディー云々という所は全く判断していません。
 そして、以下にあるように、「フランク三浦」の商品が「フランクミューラー」の商品に近似していることは、「商標の類否」の判断要素にならないと明記しています。
 フランク三浦が「フランクミューラーのパロディ商品」を発売したのは商標「フランク三浦」の登録後です。商標「フランク三浦」の有効性の基準時は「登録査定時」です。登録査定の後の事情は、商標登録の有効性に影響しません。裁判所はこのことをきちんと語っています。

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  b また,被告は,原告が被告商品と外観が酷似した商品に本件商標を付して販売していること,本件商標は引用商標を模倣したものであることに照らすと,原告商品と被告商品との間で関連付けが行われ,原告商品が被告と経済的,組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その出所について混同を生ずるおそれがあることは否定できない旨主張する。
 しかし,そもそも,原告が本件商標を付した時計の販売を開始したのは,本件商標の商標設定登録以後であることは当事者間に争いがない上に,本件において提出された原告商品の形態を示す証拠は,いずれも,本件商標の登録査定時よりも後の原告商品の形態を示すものであることからすると,原告が被告商品と外観が酷似した商品に本件商標を付して販売しているとの被告の主張は,本件商標の登録査定時以後の事情に基づくものであり,それ自体失当である。

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 パロディーに暗に言及しているのは次の部分です。しかし、この部分は「判決の結論」に影響しないことなので、他の事件に直接影響を与えるものとはなりません。

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 仮に,この事情を考慮したとしても,本件商標と引用商標1とでは前記(ア)で述べたとおり,観念や外観において大きな相違があること,被告商品は,多くが100万円を超える高級腕時計であるのに対し(⑵ア(ア)b),原告商品は,その価格が4000円から6000円程度の低価格時計であって(甲201,202),原告代表者自身がインタビューにおいて,「ウチはとことんチープにいくのがコンセプトなので」と発言しているように(甲206),被告商品とはその指向性を全く異にするものであって,取引者や需要者が,双方の商品を混同するとは到底考えられないことなどに照らすと,上記事情は,両商標が類似するものとはいえないとの前記(ア)の認定を左右する事情とはいえない。
 また,本件商標と引用商標1が類似しない以上,本件商標の商標法4条1項11号該当性を判断するに当たり,本件商標が引用商標1の模倣であるかどうかを問題とする必要はないし,本件商標の商標登録出願に当たり,原告において引用商標1を模倣する意図があったとしても,そのことが直ちに商標の類否の判断に影響を及ぼすものでもない。
 したがって,被告の上記主張は採用することができない。

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  確かに、「フランク三浦」の時計は「フランクミューラー」の特徴を備えていると思います。しかし、この点は「商標」について判断した判決の対象ではありません。「フランク三浦」の時計はパロディーとして許容できるかのような下りがありますが、フランクミューラー社が別途、不正競争防止法に基づく訴訟を提起したときには、逆の判断が出る可能性もあります。
 「商標」の類否について判断したこの判決を、「パロディー」についての判決と理解してはなりません。

        フランクミューラー                           






フランク三浦



          (共に、ネットサイトより引用)
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インダストリアルデザインの「著作権」保護

4月14日は著作権情報センターで清水節判事による研修会。テーマは「応用美術に対する著作権による保護について」。「TRIPP TRAPP事件」(幼児用椅子)の裁判長自らによる解説。
次いで16日は著作権法学会で、テーマは「応用美術の保護」。
ここで雑感を記しておきます。

1.研修会(以下は、峯の理解です)
(1)判決のポイント
  (ア)「応用美術」には様々なものがあり、明文の規定なく応用美術に一律に適用すべきものとして、「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは相当でない。
  (イ)著作権法と意匠法とは趣旨、目的が異なるので、いずれか一方が優先的に適用される関係は、明文上みとめられず、そのように解し得る合理的根拠もない。
  (ウ)意匠権は強い保護が認められるのであり、一定範囲の物品に限定して両法の重畳保護を認めても、意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律に失われることも考えにくい。
  (エ)応用美術は一定の機能を実現する必要があるので、著作権の保護範囲は比較的狭いものに止まることが想定される。

(2)清水判事の解説(通説・裁判例への疑問)
 通説・裁判例では「純粋美術と同視し得るもの」であることが要求されていることについて、
  (ア)「美術の著作物」として応用美術を保護する場合の「美的創作性」とは何か。「応用美術」を「実用に供され、あるいは産業状の利用を目的とする表現物」を定義した上で、「高度の芸術性」などのプラスαが必要なのか(他の著作物でも実用目的がある場合にプラスαを求めるのか。言語の著作物としての契約書、音楽の著作物としての駅の発車音等。
  (イ)「美的創作性」は何によって判断する(できる)のか。
      特に「純粋美術と同視しできる程度の「美術性」「芸術性」とは何か。裁判所では判断できない無理なハードルではないか。
  (ウ)意匠法と著作権法とによる二重の保護が可能な領域につき、条文上の根拠なく、意匠法による保護を優先し、著作権法による保護を劣後させることの理由は何か。立法政策の問題ではないか。著作権法制定時、結論が出ず先送りされている。

2.著作権法学会
 午後のディスカッションの登壇者は、司会:奥邨弘司教授(慶応)、本山雅弘教授(国士舘)、駒田泰士教授(上智)、今村哲也准教授(明治)、吉田和彦弁護士、金子敏哉准教授(明治)。以下、「さん」で行きます。

 本山さんと金子さんは意匠と著作権法との保護は区別すべき(区別説)、駒田さんと今村さんは区別不要(非区別説)、吉田さんは迷っている様子。
 立場表明の後、奥邨さんからいくつかのデザイン例が示され、それらが著作物か否かをパネリストが判断。興味深かったのが、「コルビジェの椅子」に対して、駒田さんが「アイデアではないか」と著作物性を否定。構成が単純だと。(そこに記憶が修練され、本山さん、金子さんがどう判断したか記憶にないのが残念。)
 その後、「研修会」に記した幾多の論点について議論がされたが、当然のことながら結論は出ない。

 峯としては、金子さんが提示した「社会通念上の著作物」は著作権で保護したらよい、という考えに親近感を覚えています。
 以下、金子さんへのメールの抜粋です。
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金子先生が提示された、「非区別説」への疑問
・保護範囲が狭い?
・翻案は考える必要がない?
・複製権以外の支分権の制約もほとんどない?
について、結局誰も答えてくれませんでしたね。
斬新な形であれば、保護範囲が狭いとはいえないだろうし、翻案もあり得るのではないか、と思っています。
(例えば、深沢直人さんデザインの無印「CDプレーヤー」)
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548076475569

 「裁判は起きないのではないか」では実務家として困るのです。
デザイナーの立場を考えると、「原則として著作物」という考え方は魅力的ですが、著作権法が対応していません。
金子先生の「社会通念上の著作物」という見方、グレーゾーンはあるにしても、親近感を持っています。
商標の世界は「社会通念上の商標(商標的使用)」を切り口にしてうまく回っています。
「属性」をみるのと「機能」を見るのとの違いがありパラレルには考えられないでしょうが。

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特許業務法人レガート知財事務所
弁理士 峯  唯 夫
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Author:峯唯夫 レガート知財事務所
弁理士 峯唯夫です。
特許や、意匠・商標・著作権などの「知的財産」を扱う仕事をして35年以上になります。
このブログは、峯の日常活動の備忘録として、思いつくことを記述します。

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