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欧州における意匠保護

昨日(3月23日)、早稲田大学・知的財産法制研究所で開催されたシンポジウム「欧州におけるデザイン保護」を聴講した。
講演者はマックスフランクで現在の欧州意匠規則のコンセプトである「デザインアプローチ」を提言されたKur(クーア)教授。コメンテーターは国士舘大の本山教授と早稲田の上野教授。

クーアさんの講演内容の大部分はデザインアプローチと欧州意匠規則との関係の紹介であったが、峯が興味を持ったのは以下の点。

1 立体的形状の保護が二次元にも及ぶ。そして、その場合の著作権のような権利制限はない。

[峯の疑問]
デザインアプローチはデザインの市場(マーケット)での機能を重視する考え方であり、商品のデザインによって需要者とコミュニケーションを取ることが想定されている(このことはクーアさんも説明されていた。)。
立体的な造形が」二次元に「複製」されたとき、デザインのマーケットにおける機能が阻害されるのだろうか。事例として紹介されたのが意匠登録されている特急列車の車両を撮影して意匠権侵害が認められた例。
近くにいた佐藤恵太先生とも、「理解できない」と合意した次第。
日本で、インダストリアルデザインを著作権で保護すべきでない、という理由のひとつに幅の広い「複製権」の存在がある。デザインを著作物と認めると、写真も「複製権」の射程に入ってしまう。これはまずいよね、ということ。
意匠で二次元の「複製」を保護してしまうと、この観点からも意匠法と著作権法とは接近することになる。

2 意匠権が、他の権利(著作権、商標権)によって容易に迂回される(他の権利を取得することによって意匠権を取得する必要がなくなる)ことは好ましくない。

[峯の疑問]
上掲のテーゼはもっともだと思います。しかし、ロゴマークを意匠保護の対象とすれば商標権との重畳は当然生じるし、著作権との重畳保護も基本的に容認して各国の法制に委ねている。しかも、1に書いたように、デザインの二次元による「複製」も意匠権でカバーしている。著作権による迂回は容認しているように思われる。
ロゴマークとの関係では、意匠権が商標権を迂回する関係にある(意匠権優位)。意匠権1つで商標権45区分の効力を得られるし、しかも商標的使用などという面倒な制約もない。それにもかかわらず、「問題は起こっていない」というクーアさんの報告。不思議です。
著作権との関係は、項を改めます。

3 意匠権と著作権
意匠権と著作権との関係については、フランスの美の一体性理論を基礎とする考え方と、ドイツの段階理論の双璧があり、双方相容れないものと思われていた。
しかし、2013年、ドイツは判例変更して段階理論を放棄し、重畳保護を容認する方向に舵を切った。迂回の容認ということになろう。他方フランスではインダストリアルデザインの著作権保護のハードルが高まっている、という麻生教授(九大)からの報告があった。
両者は歩み寄っているのだろうか。落としどころはどこなのか、興味深いことである。
このテーマで紹介されたのが「TRIPP TRAPP(トリップ トラップ)」事件。
知財高裁で著作物性が認められた事案。
これについて、お二人のコメントが。

本山教授は、意匠(立体的な造形)が著作物になり得ることを認めつつも、迂回の排除という観点から、判決には否定的な見解を述べられた。
他方上野教授は、段階理論はドイツから輸入したものであり、本家で古くなっているものを日本で維持する必要があるのか、というテーゼを出され、判決を支持するコメントを出された。

[峯の疑問]
迂回を認めない、というスタンスは正しいと思う。
しかし、欧州規則はそれができていない。というか迂回を容認している。迂回されることもあれば、ロゴマークのように迂回することもある。
「迂回することもある」ことを容認する以上、「迂回されること」を強力に排除することはできないのではなかろうか。
ロゴデザインに意匠権を認めたことは、大きな失敗なのではないか、クーアさんの話を聞きながら思った次第。

レガート知財事務所
弁理士 峯 唯夫
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電子ペーパーで変化する意匠

2016年2月1日の「日経産業新聞」に「電子ペーパーで意匠変化」という見出しの記事が掲載されている。電子ペーパーを「ピアス」や「イヤリング」などのアクセサリーに装着し、専用端末にアクセサリーを載せて画像を選択すると、その画像がアクセサリーの電子ペーパーに表示されるというもののようである。
アクセサリーの購入者は、店頭で専用端末を使用して画像を選択し、特定の画像が表示されたアクセサリーを購入するのであろう。そして、画像を変更したいときには、再度専用端末を使用して画像を選択する。

これを「意匠法」で保護しようとした場合、どのようになるのだろうか。

普通に考えると、画像は「ピアス」などのアクセサリーに表されるのであるから、これらの意匠ということになる。
ことろで、そこには数十の画像が表示できるということであるが、数十の異なる画像が表されたアクセサリーを「一意匠」として登録を受けることは可能だろうか。
まず、これを変化する意匠(動的意匠)と捉えることは可能だろうか。「動的意匠」は物品(意匠)の機能に基づいて変化するものである。電子ペーパーの画像が変化するのは「専用端末」の機能によるものであって、アクセサリー自体の機能によるものではない。
そうすると、「動的意匠」として「一意匠」になるということはできない。そしてまた、「動的意匠」は変化の前後を総合して権利範囲が決められるので、数十の画像をひとまとめにして登録を受けたところで、権利行使できる範囲は極めて限定的になりそうである。

それでは「専用端末」の意匠はどうだろうか。
専用端末の画面に数十の画像が表示される場合、1画面に表示された画像は、「専用端末」の部分意匠として登録を受けることができるかもしれない。「かもしれない」というのは、この画像は操作画像ではないので、意匠法2条1項の意匠であり、「物品の機能」を奏するために必要な画像と位置づけられるのか、限界的なものではないかと思うためである。
もし登録される、としても先の「動的意匠」と同じ問題がある。画面に表された数十の画像全体で類否が判断されるということである。

このように考えると、アクセサリーの意匠としても専用端末の意匠としても、数十の画像を効果的に保護するためには、画像ごとに登録を求めなければならないことになろう。

そうはいっても、一出願に複数の意匠を含める制度はいやだし。

データで物品の図柄を自由に変えることができる世界は、意匠法が想定していないものである。著作権に頼るしかないのだろうか。

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弁理士 峯唯夫です。
特許や、意匠・商標・著作権などの「知的財産」を扱う仕事をして35年以上になります。
このブログは、峯の日常活動の備忘録として、思いつくことを記述します。

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