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普通名称ぎりぎりの商標「モーノポンプ」と「MOHNO PUMP」

普通名称ぎりぎりの商標「モーノポンプ」と「MOHNO PUMP」
平成 26年 (ワ) 8869号 不正競争行為差止等請求事件
大阪地判2015年9月29日

要約すると、
「モーノポンプ」を普通名称のように使用している例があるとしても、同業者で「モーノポンプ」の表示をしている例はなく、「モーノポンプ」は原告の商品等表示と認められる。
他方、原告は欧文字「NOHNO PUMP」を使用しておらず、これは原告の商品等表示とは言えず、被告による「NOHNO PUMP」の使用を差し止めることはできない。
と判断された事案です。

本件は不正競争防止法における商品等表示性が争われた事案です。この判決の注目点は、カタカナ「モーノポンプ」と欧文字「MOHNO PUMP」とを峻別して判断している点です。
 商標法の世界では、欧文字「NOHNO PUMP」が普通名称であれば、そのカタカナ表示「モーノポンプ」も当然のように、識別力がないとして3条で拒絶されます。3条2項でカタカナ表示の周知性を主張しても、同じ読みの「MOHNO PUMP]が普通名称である場合、3条2項による登録のハードルは極めて高いと思います。

欧文字は識別力はない(普通名称?)がカタカナ文字は商品等表示である、という判断。不競法でも珍しいと思い、紹介する次第です。

判決の抜粋を紹介します。

次に「モーノポンプ」(原告表示3)について検討するに,上記認定の事実によれば,原告は,原告商品について,「ヘイシン」あるいは「ヘイシン」とともに「モーノポンンプ」の表示(原告表示3)を使用するほか,原告の取扱商品が原告表示3の商品であるとして長期間販売,広告を続けてきたこと,一軸偏心ねじポンプ市場において原告商品が占める割合は90%を占め,他方,原告以外の一軸偏心ねじポンプを製造販売している会社が,「モーノポンプ」を含む商品名を用いず,それ以外の商品名を使用していたことからすれば,一軸偏心ねじポンプの需要者間においては,「モーノポンプ」は代表的な一軸偏心ポンプの商品名として,すなわち,その製造販売者の原告の商品の出所表示として,周知になっているものと認められる。

この点被告は,「モーノポンプ」は一軸偏心ねじポンプを指す普通名称として使用されているものであり,原告の商品等表示としての機能を有さない旨主張する。
確かに上記1(4)認定のとおり,「モーノポンプ」を一軸偏心ねじポンプというポンプの種類を指すものとして用いられている事例が少なからず認められる。その上,原告自身でさえも,かつては「モーノポンプの専業メーカー」,「モーノポンプのシェア90%以上」など,「モーノポンプ」を一軸偏心ねじポンプを指す普通名称であるかのように用いていた例さえも認められる。
 しかし,一軸偏心ねじポンプを製造販売している他の会社はいずれも「モーノポンプ」を含んだ商品名を使用しておらず,したがって,日本の市場において「モーノポンプ」といえば原告の商品しか存在しないから,同種商品市場において「モーノポンプ」が普通名称化しているといえるわけではない。

需要者による「モーノポンプ」をあたかも一軸偏心ねじポンプそのものであるかのようにする誤用例は,商品名の要部足り得る「モーノ」が,上記(2)のとおり,一軸偏心ねじポンプの発明者に結びついて認識されている状況があることに加え,原告が一軸偏心ねじポンプ市場をほぼ独占しているが故に,一軸偏心ねじポンプといえば原告商品であり,すなわち「モーノポンプ」であるとの市場状況が存することの影響であるとも考えられる(市場をほぼ独占しているがために,登録商標が普通名称のように誤解されている例が多いことは,一般によく知られた事柄と思われる。)。
そして,少なくとも原告は,被告が,一軸偏心ねじポンプの市場に参入する前である原告登録商標2の登録申請を出願した当時から,自らの商品カタログ等において,需要者による誤用が広まって「モーノポンプ」が普通名称化しないよう配慮し始めたことがうかがえるところである。
そうすると,「モーノポンプ」が今でも一軸偏心ねじポンプそのものを指す誤用例が多く認められるとしても,「モーノポンプ」が普通名称化までしているとは認められないから,商品等表示としての機能が失われているとまでいうことができないというべきである。

最後に「MOHNO PUMP」(原告表示4)について検討するに,これは「モーノポンプ」の欧文表示として理解され得るものであるが,この表示については,昭和48年頃から昭和55年頃までのカタログに「HEISHINMOHNOPUMP」との記載が認められるものの,それ以降に原告において商品の表示として使用されていた事実を認めるに足る証拠はない。原告は「Mohno-pump」のドメイン名の使用を指摘するが,ドメイン名はアルファベットしか使用できないから,これだけでは,需要者にとって「MOHNOPUMP」が原告商品の表示として使用されているものと認識されるとは考えられない。
したがって,「MOHNOPUMP」は,周知商品等表示である「モーノポンプ」の欧文表記にすぎないけれども,これが原告の商品等表示として周知性を獲得したとは認められないので,そのことを前提とする原告の主張は採用できない。

レガート知財事務所
弁理士 峯 唯夫
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デザインスケッチは「商品の形態」ではない

デザインスケッチは「商品の形態」ではない
(平成 26年 (ワ) 17832号 損害賠償等請求事件 東京地判2015年9月30日)

不正競争防止法は、「他人の商品の形態」を模倣した商品の販売などを不正競争行為として禁止している。
「商品の形態」というためには、実際に販売されている事実を必要とするかどうか、という議論はあるものの、「具体的な形」として、すぐに商品として販売できる状態でなければならない、と一般に言われている。
しかし、どこまで具体化されていれば「商品の形態」と言えるのか、という点についての判決はなかったと思う。
「おかずを挟んだご飯」という事件があり(東京高等裁判所 平成12年11月29日判決)、この事件ではアイデアに過ぎないことを理由に「商品の形態」ではないと判示した。
この事件では、「形」が全く提示されていなかったので、未だ「スケッチ」がどうなのかという裁判所の判断はなかった。
「スケッチでもダメ」と判示したのがこの判決。
きわめて妥当な判決だと思うが、「スケッチもダメ」とした最初の判決だと思い紹介します。

この裁判。主な争点は契約の解除の正当性なのですが、解除後にデザイナーが企業に提示したデザインを、企業が使用することの正当性も争点となっています。
その中で裁判所は、以下のように判示し、スケッチは「商品の形態」にはあたらない、企業がこれを使用しても不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣)には該当しない、と判示しています。

「商品の形態」とは,これに依拠して実質的に同一の形態の商品である「模倣した商品」を作り出すことが可能となるような,商品それ自体についての具体的な形状をいうものと解される。
本件デザイン画は,衣料品の観念的・概略的なデザインにすぎず,いずれもその品目に示された衣料品等の具体的な形状を示すものではないから,被告の販売する衣料品等は,不競法2条1項3号にいう「他人の商品の形態・・・を模倣した商品」には当たらないというべきである。

デザイナーにとっては残念な判断ですが、法律の解釈としてはそうならざるを得ないと思います。

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特許や、意匠・商標・著作権などの「知的財産」を扱う仕事をして35年以上になります。
このブログは、峯の日常活動の備忘録として、思いつくことを記述します。

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