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インダストリアルデザインの「著作権」保護

4月14日は著作権情報センターで清水節判事による研修会。テーマは「応用美術に対する著作権による保護について」。「TRIPP TRAPP事件」(幼児用椅子)の裁判長自らによる解説。
次いで16日は著作権法学会で、テーマは「応用美術の保護」。
ここで雑感を記しておきます。

1.研修会(以下は、峯の理解です)
(1)判決のポイント
  (ア)「応用美術」には様々なものがあり、明文の規定なく応用美術に一律に適用すべきものとして、「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは相当でない。
  (イ)著作権法と意匠法とは趣旨、目的が異なるので、いずれか一方が優先的に適用される関係は、明文上みとめられず、そのように解し得る合理的根拠もない。
  (ウ)意匠権は強い保護が認められるのであり、一定範囲の物品に限定して両法の重畳保護を認めても、意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律に失われることも考えにくい。
  (エ)応用美術は一定の機能を実現する必要があるので、著作権の保護範囲は比較的狭いものに止まることが想定される。

(2)清水判事の解説(通説・裁判例への疑問)
 通説・裁判例では「純粋美術と同視し得るもの」であることが要求されていることについて、
  (ア)「美術の著作物」として応用美術を保護する場合の「美的創作性」とは何か。「応用美術」を「実用に供され、あるいは産業状の利用を目的とする表現物」を定義した上で、「高度の芸術性」などのプラスαが必要なのか(他の著作物でも実用目的がある場合にプラスαを求めるのか。言語の著作物としての契約書、音楽の著作物としての駅の発車音等。
  (イ)「美的創作性」は何によって判断する(できる)のか。
      特に「純粋美術と同視しできる程度の「美術性」「芸術性」とは何か。裁判所では判断できない無理なハードルではないか。
  (ウ)意匠法と著作権法とによる二重の保護が可能な領域につき、条文上の根拠なく、意匠法による保護を優先し、著作権法による保護を劣後させることの理由は何か。立法政策の問題ではないか。著作権法制定時、結論が出ず先送りされている。

2.著作権法学会
 午後のディスカッションの登壇者は、司会:奥邨弘司教授(慶応)、本山雅弘教授(国士舘)、駒田泰士教授(上智)、今村哲也准教授(明治)、吉田和彦弁護士、金子敏哉准教授(明治)。以下、「さん」で行きます。

 本山さんと金子さんは意匠と著作権法との保護は区別すべき(区別説)、駒田さんと今村さんは区別不要(非区別説)、吉田さんは迷っている様子。
 立場表明の後、奥邨さんからいくつかのデザイン例が示され、それらが著作物か否かをパネリストが判断。興味深かったのが、「コルビジェの椅子」に対して、駒田さんが「アイデアではないか」と著作物性を否定。構成が単純だと。(そこに記憶が修練され、本山さん、金子さんがどう判断したか記憶にないのが残念。)
 その後、「研修会」に記した幾多の論点について議論がされたが、当然のことながら結論は出ない。

 峯としては、金子さんが提示した「社会通念上の著作物」は著作権で保護したらよい、という考えに親近感を覚えています。
 以下、金子さんへのメールの抜粋です。
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金子先生が提示された、「非区別説」への疑問
・保護範囲が狭い?
・翻案は考える必要がない?
・複製権以外の支分権の制約もほとんどない?
について、結局誰も答えてくれませんでしたね。
斬新な形であれば、保護範囲が狭いとはいえないだろうし、翻案もあり得るのではないか、と思っています。
(例えば、深沢直人さんデザインの無印「CDプレーヤー」)
http://www.muji.net/store/cmdty/detail/4548076475569

 「裁判は起きないのではないか」では実務家として困るのです。
デザイナーの立場を考えると、「原則として著作物」という考え方は魅力的ですが、著作権法が対応していません。
金子先生の「社会通念上の著作物」という見方、グレーゾーンはあるにしても、親近感を持っています。
商標の世界は「社会通念上の商標(商標的使用)」を切り口にしてうまく回っています。
「属性」をみるのと「機能」を見るのとの違いがありパラレルには考えられないでしょうが。

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東京都新宿区高田馬場2-1-2
TOHMA高田馬場9階
特許業務法人レガート知財事務所
弁理士 峯  唯 夫
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HPはこちら http://legato-ip.jp/


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子供用の椅子に「著作権」が認められた

本年4月14日、知財高裁(清水節 裁判長)で、実用品である「子供用の椅子」に著作権があるという画期的な判決が出ました(平成26年(ネ)第10063号)。
従来裁判所では、一品製作の美術工芸品(例えば絵皿)は著作物として保護されるが、量産される実用品は原則として著作物ではない。「純粋美術と同視し得る程度に美的鑑賞の対象となるもの」に限り、著作物として扱う、という立場で判断してきました。量産品は「意匠法」で保護されるのであり、著作権法の保護対象ではない、ということです。

ところが、この判決では、実用目的の量産品であっても、「思想感情の創作的表現」と認められれば著作物として保護される、というのです。
著作物と認められた原告の椅子は以下のものです。
椅子(原告)
裁判所は以下のように述べています。
「応用美術は,装身具等実用品自体であるもの,家具に施された彫刻等実用品と結合されたもの,染色図案等実用品の模様として利用されることを目的とするものなど様々であり,表現態様も多様であるから,応用美術に一律に適用すべきものとして,高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず,個別具体的に,作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである。」
「控訴人製品の概要のとおりの,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴が,幼児用椅子としての機能に係る制約により,選択の余地なく必然的に導かれるものということは,できない。
以上によれば,控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は,
①「左右一対の部材A」の2本脚であり
,かつ,
「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点,
②「部材A」が,「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において,作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されており,「創作的」な表現というべきである。」
また、著作権法と意匠法との棲み分けについては、
「一定範囲の物品に限定して両法の重複適用を認めることによって,意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律に失われるといった弊害が生じることも,考え難い。
以上によれば,応用美術につき,意匠法によって保護され得ることを根拠として,著作物としての認定を格別厳格にすべき合理的理由は,見出し難いというべきである。」
とあっさりと片付けています。

さて、「棲み分け論」の根拠としては、意匠登録のインセンティブの他、以下の問題点が指摘されています。
1.著作者人格権の問題(特に同一性保持権)
2.写真撮影の問題(複製権)
3.リデザインの問題(翻案権)
これらに関し、「著作権が認められるとしてもその範囲は狭い」ことを前提とすれば、さほど問題は生じないだろう、という見解もあります。
しかし、ここでもう一つ問題点を指摘したいと思います。
それは、どの時点で「著作物」が創作されたとみるのか、といういことです。
デザイナーがスケッチを書いたときか、モデルを創ったときか、試作品ができたときか。
この判断次第で、著作権者が異なります。

この事案、被告商品は原告「著作物」と同一性がないと言うことで、結局は請求は棄却されています。
被告商品の一例は以下のものです。
椅子(被告)

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弁理士 峯 唯夫
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Author:legatoip
弁理士 峯唯夫です。
特許や、意匠・商標・著作権などの「知的財産」を扱う仕事をして35年以上になります。
このブログは、峯の日常活動の備忘録として、思いつくことを記述します。

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